映画女優さん
二十代前半の頃
初めて時代劇のテレビドラマに参加した。
今は亡き 萬屋錦之介さん主演のドラマだった。
右も左も判らない 経験乏しい若い私に
錦之介さんはスターとは思えぬ気さくと優しさで
細かい指導をして下さった。
寒い寒い冬のロケ地は多摩川の河原。
そこで恋人のあとを追って入水自殺をするという
ビックリするような役どころの新米女優の私・・・
なんせ女優なんて名ばかりのペーペー時代です。
テレビドラマが如何なるものかも知らないわけで
ただひたすら 監督に言われるがままに演技。
そして 川から上がった私に「大丈夫か?」と
一番に言って下さったのがあの錦之介さんでした。
あ~・・・
錦之介さんの想い出話をしたいワケじゃなくて・・・
そんな過酷な?ロケが終わった日の出来事です。
「美沙緒ちゃん 今日はよぉ~頑張ったねぇ」と仰り
「晩御飯 ご馳走しようか」と誘って下さいまして・・・
なんでも 贔屓の方が料亭をオープン、
それがその夜だったらしいのです・・・(記憶に寄れば)
で、貧乏だった私、有難くノコノコと着いて参りました。
そこは 見たこともないような すっごい料亭で
ドデカイ座敷に御膳が四つ並んでまして・・・
しばらくは 時代劇の話やらドラマの作り方を話され、
そうこうしているうちにマネージャーらしき方が現れ
こうおっしゃったのです
「姐さんがみえました」
姐さん?姐さんって・・・何?どなた?
入ってらしたのが 奥様だったあの淡路恵子さん。
目映いばかりの美しさでもう映画の一場面みたい。
髪を結いあげサングラスをし 見事なプロポーション。
錦之介さんと淡路さん、マネージャーさんと私、
結局 四人で食事をしたわけですが・・・
未知の世界に 私はもう何を食べたのやら分らん。
ただ覚えているのは 淡路さんの美しさとオーラ。
淡路さんが口を開けば
もう任侠映画の中に居るような錯覚に陥ってしまい
で、淡路さんが仰います 「お嬢さん おいくつ?」
「あっあっ・・・22です」
またもや淡路さん
「あんまり遅くなってはいけないから送らせましょう」
「あっあっ・・・ありがとうございますッ」
先日 その淡路恵子さんが亡くなられて
あの夜の事を 昨日の事のように思い出しました。
映画の女優さんって ホントに綺麗です。
舞台ばかりやってると
日頃 スッピンで居る事に慣れてしまい
ああいうオーラや美しさは 私の中では絶滅状態
いかんですなぁ~これじゃぁ・・・
80歳まで現役でやられていた淡路さん・・・
波乱万丈な人生だったと聞き及んでいますが
あの強さと佇まいは 学ばなければなりません。
あの日 貴重な場面に遭遇させていただいた事
「ありがとうございました」
淡路恵子さんの ご冥福を心よりお祈りいたします。
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