理想的な老い方
母 次子さんには、ハツさんという祖母がいた。
五人兄弟の真ん中に生まれた次子さんを
この祖母は 特別に可愛がったそうな。
写真を見ると、顔の骨格や表情がよく似ている。
ハツさんは「この子は わしの分身じゃ」といい
「うっひょっひょ」と笑いながら 誕生を喜んだそう。
まだ幼かった次子さん、夜中にハツさんに呼ばれ
家族に内緒で 夜ごと密談?をしていたそう。。
商家育ちのハツさんの趣味は金勘定だったそうで
この夜中の密談では
「金は大事かもんよ。儲けにゃいけんよ」
「こうやって 銭んこば数えとぅ時が楽しいけんね」
いつも そう次子さんに言い聞かせながら
床下に隠していた壺だか箱だかを出してきては
嬉しそうに金勘定する祖母だったらしい。
まるで、昔々見た映画《がめつい奴ら》みたいだ。
(ついでに言っておくと、
この祖母の薫陶のお蔭で次子さん後に財を成す)
そのハツさん、ある晩ご機嫌な様子で晩酌した後
鼻唄まじりで 五右衛門風呂に入り、
そのうち ゴォゴォゴォーーーと大鼾
で。。。そのまま天国へ逝ってしまった。
ほんのりピンク色に染まったハツさんは
まるで眠ってるような 実に幸せな顔だったそう。
「私も死ぬときゃアレがいい」が次子さんの口癖。
さて・・・
昨日 お祭りでも覘いて来ようと思っていたら
母の施設から電話があった。
「次子さん意識がありません。救急搬送します」
取るものもとりあえず、施設に飛び込んだ。
母は 何人もの救急隊員に取り囲まれている。
医者が常駐している施設ではないため
こういう場合 即救急搬送という事になってしまう。
しかも 悪い事に 昨日は祝日。
通院してた二軒の病院には受け入れてもらえず
「救命センターはダメです。
延命はしないというのが 母との約束ですから」
救急隊の方にそれだけはお願いして別の病院へ。
救急車の中の私はといえば
哀しいと言うより
頭の中に 現実的な様々な事が・・・
「誰に連絡すべきか?」「葬儀は家族葬で行おう」
「生命保険はどうなってた?」「幾らかかる?」
そして祈った。
「パパ、久しぶりの対面、優しく迎えに来て」
「ハツさん、もう一緒に金勘定しなくていいよ」
確かに意識は混濁しているように見えるが
声をかければ かすかに反応する。
そして、ようやく病院に到着した次子さんは
母から聞いていたハツさんの最後のように
ビックリするほどの天に轟かんばかりの大鼾だ。
『ホントにハツさんと同じように逝っちゃうんだ』
『89歳。こういうのは大往生っていうのかなぁ』
脳から始り、次々に行われるCT検査。
担当の医者が 私に言った・・・
「これ、眠ってるだけですよ。すごくよく寝てる」
「・・・」
以下 医者からのコメント・・・
ビックリするくらいの健康体です。どこも悪くない。
少し栄養が不足して痩せてきてる。
しかし、これは自然な事。人間のあるべき姿。
こうして眠り続けるのも、食が落ちて痩せるのも
ごく自然な事なんですから 心配いりません。
立派に 正しい 自然な老衰の道を歩いてます。
驚いた。まず救急搬送と あの大鼾の様子に。
驚いた。じわじわと ゆっくり衰えてきてるが
ひょっとしたら百歳くらいまで生きるかもに。
そして、この騒ぎのたった一日で
もう立ち上がれない程に 疲れ果てた。。。
一気に10歳くらい老けた気がする。
はぁ~
こうなったら、ともかく 私が健康体でいなきゃ
次子さんより先に逝くなんて事のないように
頑張らなきゃッ
長々しいご報告、失礼しました。
日時 12月5日 土曜日
13時開場 14時開演
17時半開場 18時半開演
会場 GINZA Lounge ZERO
中央区銀座7丁目5番4号 毛利ビル7階
チャージ 4,500円 (ワンドリンク付)
※チケット発売開始 10月1日~
※メール misa-ticket@hotmail.co.jp
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コメント
救急車の同乗経験は、何度もありますよ。心身とも疲れる救急車の同乗です。本当にお疲れ様でした。まさにびっくりぼんでしたね。
投稿: ダンキチ | 2015年11月 4日 (水) 20時15分