男と女の違い
主人公の厚子には
生涯でたった一人 愛した男が存在した。
心にその男への想いを強く秘めながら
訳あって 先妻の子を持つ男 桐原のもとへ
後妻として嫁ぐ。
が、夫である桐原は戦犯として銃殺刑に処され
遺された愛娘を 彼女は育て上げ 嫁に出す。
ここで 厚子は《自分の務めを果たした》わけで。
ひとりになった厚子に遺されたものは
かつて愛した男の日記を繰り返し読みながら
晩年を過ごすことだけに幸福を見出だすこと。
その男も すでに他界。この世には居ないのだが。
先日のそんな舞台を観に来た人たちの感想が
「男と女では こんなに違うものか」と
改めてその捉え方や違いに驚いている私。
自分への想いを確かめたくて亡霊として現れ
愛を問う夫を「女々しい」と言った女性グループ。
そして「男はみんな女々しいものよ」と豪快に笑う。
「なんか酷いよな。真実を語る必要あんのか?」
ある男性客は 夫桐原を心底気の毒がる。
証言台で「夫と共に死を選ぶ」と言わなかった妻に
亡霊になって現れる夫としては
その真意を問いたいだろうし
妻の口から自分への愛を確信したいだろうし
それを確かめてから 成仏したいところだろうが
いやいや・・・女と言うのはそんなにヤワじゃない。
どうしてもその言葉が出なかったと語る女の中には
依然として 生涯唯一愛した男が棲んでるのだから。
「愛は人を傲慢にするの」と感想を漏らす友人には
かつて 夫以外に強い想いを寄せる人が居た。
けして夫には悟られず 家庭内に問題も起こす事なく
ごく普通に円満な家庭を築いていると思っていたが
《唯一のひと》を ただただ心で想い続けながら
その日々を暮していたこの友人は
結局 自分の心に嘘がつけず その後離婚。
もちろん 何も語らずの円満離婚だったし
夫以外のその男性のもとに走ることもなく
今はひとり 愛した男を想いながら暮す婦人が
私の傍にも 実際そこに存在していた。
彼女は「幸せよ。あの人の事を想うだけで幸せ」と
誇らしく胸をはりながらも
「でも、自分の気持ちに正直に生きてきたとはいえ
あの頃の私は傲慢の塊だったわね」と微笑む。
主人公厚子は きっと長生きしただろうと私は想像。
愛した男が遺した日記を繰り返し読むことだけで
十分に生きていけるのが《女》だろうと私は思う。
書かれた言葉が真実か否かなど問題ない。
彼女の中の真実は揺るがないのだから。
友人の中で最も心優しく素直な男が涙して言った。
「彼女は日記を手に 最後の珈琲を飲みながら
死んでいったんだね・・・可哀想に」
いやいや、だからぁ~
女はそう簡単には死なないって言うの!
どっこい想い出だけで生きていけるんだってば~!
この素直な彼には気の毒だが
「女に勝手な幻想を抱かない方が良いよ。
基本 女の方が強かで 女の方が現実的だもん」
劇場からの帰り道 そんなことを言ったら
淋しそうに「そうなのかぁ」と笑った彼。。。
言わなきゃ良かったかなぁ
夢を壊さない方がよかったかなぁと反省する私。
《これからの舞台のお知らせ》
ミュージカル《天国の本屋》
東京公演は
2020年1月17日~25日 よみうり大手町ホール
大阪公演は
1月31日~2月2日サンケイホールブリーゼ
※チケット発売日 12月15日より
劇団菊地ブログ
https://ameblo.jp/gekidan-kikuchi/
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